STORY

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TADの歴史

TAD誕生まで(1937-1978)

TADの母体であるパイオニアは、1938年に創業者である故松本望氏が、自ら作成した国産初のHi-Fiダイナミックスピーカー"A-8"を、最初の製品として発売することで、スピーカーメーカーとしての一歩を歩むこととなりました。

その後1975年に、世界のプロ用スピーカー市場でも認められる、最高級スピーカーの開発プロジェクトが、パイオニア内で発足しました。これがTADの誕生に至るきっかけになりました。

パイオニア 第一号製品
A-8スピーカー


プロ用スピーカーブランドとしてゆるぎない地位を築いた時代(1978-2000)

プロジェクトの為に、アメリカより招聘されたBart Locanthiは、自らが信じる高性能なスピーカーの開発を成し遂げるため、パイオニアの技術者に、シミュレーションと実験を重ねさせ、当時の物づくりの常識を覆すような製品の精度や、本物の技術の必要性を理解させました。

こうして出来上がった1号機が、1978年にアメリカのAES(Acoustic Engineering Society)で発表されたコンプレッションドライバー"TD-4001"でした。本製品はアメリカで発売後、従来品の性能をはるかに凌ぐ製品として、世界の著名なレコーディングスタジオ、例えば当時レコーディングスタジオの設計の第1人者でもあったトム・ヒドレーが設計した数々のスタジオや、エアースタジオ、キャピタルレコード、Record Plant等で使用され始めることとなりました。

日本での発売は、米国での発売より2年ほど遅れましたが、1979年、イーグルス・ジャパンツアーでSR(Sound Reinforcement)システムとして使用され、大きな話題を呼びました。
また、TADのユニットは、Jimmy PageやPrinceなど、アーティストのプライベートスタジオでも使用されることとなりました。

こうして、1980年代、90年代の全世界の著名なスタジオでは、TD-4001以降に発売されたコンプレッションドライバーやウーファーユニットが使用され、20カ国300以上のスタジオで使われることになりました。
TADの理念・思想が認められ、プロの現場で高い信頼を築くことができたのです。


プロが認めた技術をコンシューマーモデルに展開した時代(2000-現在)

21世紀に入り、2002年の米CESにおいて、TADブランド初のコンシューマー用高級スピーカー「TAD-M1」が発表され、翌年には日本で発売されました。
TAD 初のコンシューマー用スピーカー開発の根底に流れていたのは、自然でリアルな音の再現、その結果として得られる"音像と音場の高次元での融合"です。
音のかたち、音の色、空間、そして余韻を感じるために、Smooth dispersion(音の自然な広がり)とHigh definition(なめらかな音)の二つのポイントがフォーカスされました。

水面に落ちた一滴のしずくが、波紋を水面にきれいに広げて行くように、音がリスニング空間に自然な広がりで満ちていく。これが一つ目のSmooth dispersion(音の自然な広がり)です。これを実現する為には、ひとつのユニットからの音の放射パターンを、全周波数帯域において的確にコントロールする必要があります。

その為にTADが開発したのが究極のCST*ドライバーです。この同軸のCSTドライバーは、250 Hzから100 kHzにわたるスムースかつ超広帯域の周波数が再生されるように設計されていると同時に、トゥイーターとミッドレンジの2つの振動板を持っているにもかかわらず、あたかもフルレンジスピーカーのように一つの音源として動作し、水平のみならず垂直方向にも同様の音の放射が行なわれます。

二つ目は自然な音の再現、High definition(なめらかな音)です。自然な音を聴く為には、最先端の音源フォーマットを十分再生できるスピーカーシステムでなければなりません。過去には20 kHz以上は可聴帯域外で不要(CDフォーマットなど)と考えられていましたが、超高域の倍音を再生することで、可聴域の基音が充実することは、周知の事実として近年認識されています。それが自然界の音なのです。

この超高域の再生を実現する為には、軽量・超高剛性でありながら、高内部損失と理想的な振動板材料であるベリリウム振動板が最適です。開発されたCSTドライバーはこのベリリウムを、トゥイーターとミッドレンジ双方に使い、最適なダイアフラム形状やボイスコイルとあいまってトゥイーターの再生帯域を100 kHzまでひろげています。同時に、ベリリウムだからこそ可能となった浅型で大口径のミッドレンジが、250 Hzまで低域を押しひろげています。

このように、「TAD-M1」に搭載されたCSTドライバーは、音源位置の集中化、100 kHZまでの広帯域化、理想的な指向特性の確保を目指して開発され、継承されてきた思想や蓄積された技術が高次元で融合されたものでした。これはミッドレンジとツイーターを同軸構造とする高精度加工技術や、蒸着ベリリウム振動板を世界で唯一具体的な商品レベルに展開したTADの独自技術といえるものです。

こうしたCSTのコンセプトは、2007年のTAD Reference Oneをはじめ、現在もTADのスピーカーに搭載されています。

CST* = Coherent Source Transducer


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